西日の町 (湯本 香樹実)2008年11月15日

母は僕を連れ、まるで西日を追いかけるように西へ西へと転々とする生活を 続けた。それはまさに「風に吹かれる二枚の木の葉のような」生活。行方知れずだった てこじいが転がり込んできたのは Kにようやく腰を落ち着けた頃だった。

寝ている てこじいに対して母は掃除機をわざとぶっつけたり 足先を踏んづけたりするかと思うと、食欲がないから 少しでも食べさせようと好物を並べたりする。血がつながっているからこそ 憎み、そして心配する この矛盾した気持ちを 僕の目を通して 母と祖父の愛憎がうまく 表現されている。てこじいが 火の用心と書かれたバケツに貝を 
いっぱい入れて 持ってくる場面は泣かせる。父と娘の切っても切れない 因縁みたいなもの感じさせる 小説です。